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ボーイングとダグラスの対決の前に、もう一つのドラマがあった。
ボーイングに先がけて、世界初のジェット旅客機「コメット」を開発して就航させたのはイギリスのデハビラント社で、同社には注文が殺到していた。
成層圏飛行するジェット輸送機のボディに金属疲労が起こり、二度も空中分解を起こす大惨事を招いた。
謎だった原因を解明し、対策をとれるようになるまでの四年半にわたって、飛行停止となった。
ちょうどこのころ、ジェット輸送機の開発を手がけていたボーイングは、「コメット」の事故原因となった金属疲労の実験を徹底して行ない、十分な対策をとりつつ初号機を開発した。
就航は、「コメット」の対策機が再登場したのとほぼ同じ時期だった。
リスクをいとわず、革新技術のジェット機に果敢に挑み、開発して実用化させたデハビラントだったが、事故の解析と対策に手間とって、結局は好機を逸してしまったのである。
ようやく再登場させたときには、技術的信頼を失い、機体も小型だったため、すでに大型機を投入していたボーイング機にとても太万打ちできなかった。
やがて、デハビラント社は名を歴史の舞台から消すことになる。
デハピラントの悲劇は、技術革新期において先駆者につきまとうリスクものである。
航空機と自動車では市場の性格も異なるし、研究開発の規模も額も違うジェット化も代替エネルギー自動車の開発もともに、エンジンの根本的革新である点においては共通している。
先駆者と後発者、新しい技術製品の投入時期、さらに経済性と時代の要請などさまざまな要素が絡みあう中で、運、不運が作用する。
一九九七年十一月、アメリカでは、クリントン大統領の指名したエネルギー専門委員会が、連邦政府に対してエネルギー研究をより活発化させるために、向こう五年間で十億ドル規模の予算を投入すべきであると勧告した。
石油の枯渇に対処するためである。
四年前にやはりクリントンが打ちだした先にも触れたが、石油生産がピ-クを迎えると、価格の上昇は不可避である。
第一次石油危機のとき、世界の石油市場に占める中東諸国の割合は三六パーセントだった。
このため、中東諸国による価格支配力が強くなり、OPECが原油価格引き上げを決めるとただちに高騰した。
世界の石油需要が減ると同時に、後、北海油田やアラスカのノ-ススロープ油田の生産が本格化したため、中東諸国の占める割合が低下して、原油価格が暴落したあのときから四半世紀がたつた現在、状況は大きく異なっている。
OPECが占める比率を下げられたアメリカ、カナダ、旧ソ連などにおける石油生産がすでにピ-クを過ぎて下降線をたどっている。
北海油田もアラスカもまもなく同様の経過をたどるが、にもかかわらず、最近の世界の石油需要は年率二パーセント以上の伸びを示してきた。
一九八五年以降、ラテンアメリカにおける石油消費量は三Oパーセント増、アフリカが五Oパーセント増、経済発展が著しいアジアにおいても五Oパーセント増である。
米エネルギー情報局の予想では、世界の石油需要は二O二O年までに六Oパーセントも増加するとしている。
この間に、思い切った省エネルギーが世界的に行なわれ、さらに、技術開発や代替燃料(天然ガスを含む)の利用法も開発されて、再生可能なエネルギー(太陽光や風力による発電)も広く利用される方向へとスムーズに移行しなければ、OPEC加盟国が生産する石油への依存率が急激に高まることになる。
二OOO年には三Oパーセント、二O一O年には五Oパーセントにまでも上昇する。
石油価格の相場は完全にOPECに握られ、いつでも石油危機が起こる可能性があり、大不況が襲って世界経済は長く停滞し、失業者があふれでも不思議がない時代となる。
それも、第一次石油危機のときと違って、石油生産が一方的な下降線をたどるため、先へいくほど状況はよりきびしくなる。
クリントン大統領がPNGV計画を進め、エネルギー研究に十億ドルを投入すると勧告をするのも、石油の需給は国家の安全保障の問題に直結するからだ過去の例からしても、石油危機の再来は、経済的な問題だけでなく、政治問題、人種問題、南北問題、軍事的緊張に発展して世界が不安定になる可能性が十分にある地球温暖化防止条約会議でも見られたように、地球温暖化対策、排ガス規制をめぐっては、ヨーロッパ諸国がきびしい姿勢を打ち出した。
発展途上にあるアジア諸国は、先進諸国が主張する規制ものに反発した。
まで、長年にわたって二酸化炭素などを無制限に排出して、地球温暖化の張本人であるはずの先進国が、ここにいたって、世界の国を一様に規制して抑え込みを図ろうとしている。
結果として、発展しようとしているアジアの経済にブレーキをかけようとするのは不公平で、自分勝手ないいぐさだというものだ。
今後、ヨーロッパの国々を先頭に先進諸国が、地球環境という、だれもが反対できない大義名分を振りかざし、発展途上のアジア諸国に対して、右へ倣えと圧力をかけ続けることで、発展のスピードを鈍らせようとするであろう。
自動車百年の歴史においても、蒸気、電気、ガソリンなど、どの燃料が主役となるか、競いあった時代もあった。
さらには、二度の世界大戦、石油危機もあり、自動車メーカーの過当競争、浪費ものをつくりだすような車も続々と登場した。
まで、世界の自動車産業はさまざまな試練に直面して、何度かターニングポイントを経験してきたが、ガソリン車ものの存在が危うくなるほどの局面はなかった。
いま、「自動車産業を変える歴史的合併」とまでいわれて、ベンツとクライスラーの合併合意が驚きをもって受けとめられている。
自動車産業が世界的再編の時代に入ったと強調されるが、もはや、そうした次元さえも超えるほどの大きな波が押し寄せてきている。
過去半世紀における、米、独、日の自動車産業のさまざまな局面を振り返ってみてきたが、あえて一言つけ加えれば、規模の利益を目指す巨大企業の誕生が、からの時代の切り札になるといえるのであろうか。
たしかに、信頼される車をつくってきた名門のロ-ルス・ロイスやローバー、ポルシェなどが単独では生き残れず、安全を売りものにしてきたボルボも近いうちに巨大メーカーの軍門に降るものと予想されている。
中堅メーカーが、特化したかたちで車づくりをして利益をあげて、存続していくことは不可能に近い時代となった。
ロールス・ロイス車は最高級で信頼性が高いといわれるだけに、かえって排ガス対策や安全技術、さらに最近は飛躍的に比重が高まってきているエレクトロニクス技術などには人一倍、力を入れて装備を充実しなければならない。
消費者の側からあえて述べれば、当面するそれら重要な技術課題は、車の本質や目的ものではない。
代替エネルギーの問題にも対策をとる行動も含めて、人々に愛され、親しまれて、気に入られる車がメーカーからつくりだされるべきことが本質であり、出発点である。
衝撃を与えたベンツとクライスラーという巨大企業同士の合併の狙いは、環境対策や次世代自動車の研究開発投資が大きく膨らんで企業の経営を圧迫する時代となったため、両社が一つになることで二重投資が避けられ、より巨額の資金を有効に活用することで競争力を増そうとしている。
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